第127章 苦悶
「――――もう少し、ここに、いて……。」
私が小さく呟くと、リヴァイさんはベッド脇の椅子にドカッと腰をかけて、私の手を握った。
「――――最初からそう言え。エルヴィンのところには看護師をつけてる。安心して休め。」
「……はい………。」
その手はとても温かくて、リヴァイさんの家に向かう地下街の道中で――――初めてリヴァイさんが手を繋いでくれた時と同じように、私が指先をきゅ、と握ると、ぎゅ、と握り返してくれる。
駄目だ本当に、特にこんな風に弱っている時には。
やっぱり私は強欲で。
この手の温もりもまた離したくないと思ってしまう。
「――――リヴァイ、さん……。」
「………なんだ。」
「とんとん、して…欲しい……。」
「………とんとん……?」
妙な沈黙が流れる。
なんだそれは、って思ってる顔だ。
私は自分の胸に手を当ててとん、とん、と小さくリズムをとった。
「――――鼓動と同じ速さでとんとん、って………。」
「…………。」
リヴァイさんは眉間に皺を寄せて、よくわからないといった顔で、手を繋いでいないほうの手で、私の胸部を優しくとん、とん、と小さく叩く。
あぁ、少し早いのは――――、リヴァイさんが自分の鼓動のリズムで打つからだ。リヴァイさんの心音は強くて、早い。
でもそれがとてもとても心地良くて――――うとうとと、勝手に瞼が閉じていく。