第127章 苦悶
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リヴァイ兵士長の心遣いももちろん嬉しかった。
でも、何より私の好きなものを覚えてくれていることが、嬉しかった。
不思議な縁だなと思う。
お父様がお母様に贈った紅茶。
お父様を理解したくてお母様が毎日飲んだ紅茶。
それを一緒に飲んでいた私。
その紅茶はワーナーさんに、リヴァイさんに伝わって――――、リヴァイさんの好きなものになった。
そして……事あるごとに、私たちをその美しい紅色とかぐわしい香りが、繋いでくれている。
早く体力を戻して、エルヴィンの元に帰らないと――――……また、痛がっているかもしれない。苦しんでいるかもしれない。
何も、何もできないけど――――、側にいることはできるから。
どこにもぶつけられないなにかがあるなら、ぜんぶ私に分けて欲しい。罪も、罰も、業も、痛みも――――すべて。
そんなことを思いながら、気付けば深い眠りに落ちていた。
――――夢を、見た。
――――どこまでも広く、青々とした原っぱと抜けるような蒼天。
まるでエルヴィンの瞳のような蒼い空。
そこに佇むのは――――少女だ。
………幼い頃の――――私?
少女は何かを焦がれて待つように、遠くを見つめている。やがて少女の目線の先に、ぼんやりとした人影が見えてきて―――――少女は、その“誰か”を見つけて駆け出す。
その腕に、飛び込むために。
ずっとずっと探してきた誰かを――――、私を受け入れて愛してくれるその人の腕に飛び込む。
あなたは私を離さないと言うけれど、それはお互いさまなの。
私だって離したくない。
この夢の中の少女のように――――、素直に、ただまっすぐに――――大切な、大好きなあなたの胸に飛び込みたい。
たとえ私を抱き留める腕がなくても。
その目に私を映して、私の名前を呼んで。
ただ、それだけでいい。