第124章 白日
「お前さぁ、疲れてんだよ。なぁ?ベルトルト。こうなってもおかしくねぇくらい大変だったんだろ?」
心臓がバクバクと強く打っているのに、頭は意外に冷静だった。
ここは壁上だ。こんな所でもし巨人化なんてしてみろ。何が起こるかわからない。
ライナーとベルトルトが巨人である可能性を示唆する言葉を本人が吐いた。この場をごまかして―――――2人が気を抜いたところで、捕獲できるのが一番いい。
とにかく―――――話を逸らさなければ。
俺の言葉に、ベルトルトがこれ幸いと言った表情で乗っかってきた。
「あ、ああ……そうだよ!ライナーは疲れてるんだ。」
「大体なぁ、お前が人類を殺しまくった“鎧の巨人”なら音でそんな相談を俺にしなくちゃなんねぇんだ。そんなこと言われて俺が『はい行きます』って頷くわけがねぇだろ。」
ライナーの言葉を、なんとか冗談に……気が滅入ってしまったから出た錯乱の言葉に……したかった。
いくら黒に近いと言っても―――――同じ時を過ごして来た2人が俺達を欺いていたなんて、俺はまだ、信じたくなかった。
だけど………その表情で確信した。
ライナーは……“しまった”という顔をした。
ベルトルトもまた……ライナーの口走ったことに対してどう処理すべきかを考えている、そんな顔だ。
「そうか……その通りだよな……何を……考えているんだ俺は……本当におかしくなっちまったのか?」
「――――とにかく街に行くぞ。」
なんとかこのまま、壁上から街に降りて―――――どこでもいい、拘束できそうな地下まで誘導したい。
そして拘束して尋問して――――2人の疑いが晴れればいい。
「きっと……ここに長く居すぎてしまったんだな。バカな奴らに囲まれて……3年も暮らしたせいだ。」
ライナーが小さな声で、だけどとても思いつめた声で話し出した。
ざわ、と鳥肌が立った。