第120章 一変
その時――――、遠くからバタバタと駆ける足音が聞こえた。やがてそれは近づいて、会議室の扉を跳ね除けた。そこには――――ミケさんの班にいたはずのトーマさんの姿があった。
「エルヴィン団長!!!!!大変です!!!!ウォール・ローゼが!!!!!」
「―――――!!!!」
トーマさんの話では、ミケ分隊長の監視のもと104期生をウォール・ローゼ内の南に位置する施設で隔離中―――――複数の巨人が南から出現したというものだった。
「うそ………!ミケさん………っ………!」
ミケさん、ナナバさん、ゲルガーさん……、104期のみんな………。
ウォール・ローゼの突破は――――、この世界の終焉を意味する。
ウォール・シーナの領土だけで人間は生きて行けない。人々はこれからこの壁の中で殺し合いを始める。
――――なぜこんなにも急激に歯車は回り出した?
そしてその歯車も今にも崩壊しそうなほどに軋んで、まるで人類の終焉の悲鳴のように音を上げているみたいだ。
どうすればいい、どうしたら――――……絶望から意識を浮上させられない。身体の震えが止まらない。その場にいた全員が、最悪の事態を理解することすら拒むように、ただ唖然としていた。
けれど目をやった先のエルヴィン団長だけは違った。
その表情は、まだまるで諦めていない。
“そう来るか”とでも言いたげに――――次の手を考えている。
なんて強くて、冷静で、頼もしい。
調査兵団に、この世界に、彼がいてくれてよかった。
エルヴィンが諦めない限り、私もどこまででも一緒に行ける。
この人の側にいられることを――――心から誇りに思う。