第119章 黙秘
女型の巨人であると思われるアニ・レオンハートを拘束する。
それは私たちが王都へ参集される日、ストヘス区を抜ける時に決行する。まずアルミンがアニに接触、エレンを逃がすためにウォール・シーナの検問を突破できるように憲兵団として協力して欲しいと持ち掛け、ストヘス区内の地下道に誘い込む。
そこで拘束を試みる。
早朝から、幹部とアルミン、そしてストヘス区出身の兵士数名を含めて緊急の作戦会議が行われていた。
「ストヘス区内の地図を取り寄せました。ストヘス区出身である彼らからも地下道の状況やその周辺住民の居住状況等の情報を補足してもらいましたが、女型の巨人化などの有事の場合も住民に及ぶ被害が最も少なく、兵を潜ませることができそうなのは―――――ここかと。」
「地下廃墟への入り口か。」
「はい。」
「いいだろう、壁からも距離がある。万が一巨人化して逃走を謀ったり、エレンとの戦闘が始まったとしても―――――、壁を破壊される可能性も低い。」
「エルヴィン団長、アニを誘い出すための一時接触は僕が行きます。そこからエレンを連れていくその先は、ミカサも連れて行かせてください。ミカサがエレンをどうしても助けたいと行動を起こすのは、アニにも容易に想像がつくはずです。何より―――――突発的な戦闘力として、恥ずかしながら僕はほとんどあてにならず、ミカサの戦闘力はエレンを守るためにも必要です。」
アルミンが臆することなく、エルヴィン団長に向かって意見を述べる。
「ああ。ちょうど君たちは3人で行動することが多かったと聞く。逃がすため、という口実に信憑性も増す。」
「はい。ありがとうございます。」
「――――エルヴィン団長、急ぎご判断いただきたいのは、近隣住民の避難についてです。通常であれば駐屯兵団の力を借りますが、今回ばかりはそういうわけにもいきません。もちろん調査兵団から派兵されるかと思いますが、あまりに広範囲での住民避難を秘密裏に行うことは不可能かと。駐屯兵団に怪しまれればそこから憲兵団の耳に入るかもしれません。それは避けたく―――――、一案があります。」
「ほう。」
エルヴィン団長は私にちらりと目線をやって、話せ、と促した。