第115章 継受
温かな陽が射す丘の上の木陰で――――、ナナの膝に頭を置いて、微睡む。
白銀の髪が風に揺られてさら、と俺の頬を撫でる。
その髪を指に絡めて遊ばせると、本を読んでいたナナがそれに気付いて――――本を置いて、俺を堪らないほどの笑顔で見下ろし、小さくキスをする。
遠くには父の墓標と――――それに祈りを捧げる母の姿。
その上空を、“飛行船”が飛ぶ。俺は飛行船を指さして――――いつか外の国へ一緒に行こうな、とナナに告げた。
すると――――ナナは小さく“Yes”と答えた。
――――そんな、永久に続けばいいと思うほどの温かくて心地よい眠りから目覚めさせようとしているのか、鈴を転がすような透き通って愛らしい声が俺を呼んでいる。
「――――ィン…………。エルヴィン………。」
俺は幸せで深い眠りから、まるでナナの手に引かれてそこから脱するように目を開けた。
そこには、夢の中と同じ―――――白銀の髪を俺の頬に掠らせ、俺を見下ろしながら女神のように優しい眼差しで俺を見下ろすナナがいる。
――――なんて綺麗なんだろう。
「――――おはよう、エルヴィン。」
「……おはよう……。」
「3時間くらいしか寝れなかったけど……気分はどう?」
ナナが眉を少し下げて問う。
「すごくいい。――――やっぱり君がいてくれるとよく眠れる。」
「それは良かった。少しは元気になった?」
「元気に……なりすぎて、もう一戦くらい交えられそうだ。」
ぐい、とナナの腰から背中に腕をまわしてその身体を引き寄せる。自然と距離が縮んだその豊かになった胸の頂きをペロリと舐めて転がすと、ナナがぴくんと反応した。
「―――――ん、やっ!こら、だめ!」
「なぜ?」
「なぜ?じゃないよ、お仕事……!」
「まだ兵服を着ていない。」
「じゃあ着よう。ほら!起きて!」
「――――覚めたくない、眠りだった。」
「じゃあまた今夜、続きを見ればいいよ。」
ナナは柔らかく微笑んで俺の髪を撫でた。