第113章 奏功
見上げれば晴れ晴れとした青空。
ここは壁から少し離れた場所。
俺が囲われている古城と、トロスト区のちょうど中間くらいに位置している廃村。
今日はそこで俺の巨人化に関する実験をするらしい。
万が一巨人化して自我が無くなった時に拘束できるように、枯井戸の中での巨人化を試みる。
昨日の新兵の所属兵科を決める時の団長の言葉に、俺は心臓が潰されるような心地だった。どれだけ俺がこの力を操れるのかが重要か、それにどれほどの人間の命が賭けられているのか、痛感したからだ。
実験でもなんでもやってやるという思いはあるが、やはり自我を無くした巨人になってしまうのは少し怖い。
これも昨日、対策本部の一室でリヴァイ兵長に突き付けられたことだけど――――、俺が巨人化して自我を失ったら殺すと言われていたけど、殺さずに巨人の項から肉ごと切り取って剥離するという。
自ずと手足は切断することになるが、また生えてくんだろ。と言う………いや、確かに多分そうなんだけど……俺としてはどうやれば回復するのか、なんてことも分からないわけで……。ただそんなことも言ってられない雰囲気で、兵長の鋭い目で睨み付けられて嫌とは言えなかった。
それに兵長が言ったことももっともだ。
俺が『なんの危険も冒さず、なんの犠牲も払いたくない。』そんなことを言える立場じゃないんだ。
――――そうだ、言ったじゃないか。ミカサを、アルミンを、ナナを―――――そして人類を守るために、俺は早々にこの力の使い方を知って、操れるようにならなくてはならない。