第112章 狐疑
「失礼ですね。覚えてます。でも、今だから一人で行動しても大丈夫なはずです。これを。」
私は今日の王都での新聞をリヴァイ兵士長の目の前に置いた。リヴァイ兵士長はそれに目を通して小さく口に出した。
「――――王都で暴動。巨人化できる少年を神格化し、ウォール・マリア奪還の可能性を主張する商会組織を中心とした運動が高まる………。」
「中央憲兵は今、王政にとって不都合な――――エレンを担ぎ上げようとする人たちを抑え込むのに手いっぱいなはずです。」
「――――………そうかよ。だが保証はねぇだろう。」
「――――……ふふ…っ……。」
「なんだ。」
「――――今のはもう本当に――――……、あの頃のリヴァイさんの、顔でした。」
「…………。」
あまりにも過保護だから。
まるで地下街を絶対に一人で歩かせまいとしていたあの頃のリヴァイさんみたいで、思わず懐かしくなってしまった。くすくすと笑ってそれを告げると、ほんの微々たる変化だったけれど、ふっと、空気が和らいだ。
「――――私も少しは強くなったので、大丈夫です。信じてください。――――リヴァイ兵士長が褒めちぎりたくなるくらいの、資金調達をしてみせますから。」
私が強い意志を持って伝えると、リヴァイ兵士長は小さくため息をついて―――――扉に向かって歩を進めた。
「――――……そうか。気を付けて行けよ。」
私の横を通り過ぎる時に私の髪に触れる。
それは心配だと、本当は壁外どころか王都にすら行かせたくないんだと、そんな気持ちを押し込めてくれた――――心の揺れが指先に現れていた。
いつもいつも、ごめんなさい。
そして、信じてくれてありがとう。
「はい、行ってきます!」
こうしてリヴァイ兵士長に作戦のあらましを伝え終えて、王都へと出立するその時間にはもう、調査兵団に新規加入する新兵が決まっていた。
21名。
ミカサとアルミンはもちろん、勧誘行脚や翼の日に見かけた子達の姿もあった。
―――――この中に、敵がいるの―――――?
渦巻く胸中の不安を掻き消して、私は王都に向かって馬を走らせた。