第110章 審議
「はっ………。こいつは巨人化した時、力尽きるまで20体の巨人を殺したらしい。敵だとすれば知恵がある分厄介かもしれん。――――まぁ、だとしても俺の敵じゃないが……お前らはどうする?」
――――それは、この世で唯一リヴァイ兵士長にしか言えないセリフだ。
「こいつをいじめた奴らもよく考えた方がいい。本当にこいつを殺せるのかをな。」
この危険な力を制御できるのは、そもそも調査兵団の中でも―――――この男、リヴァイ兵士長しかいないのだと、全員が理解した。そして最適なタイミングでエルヴィン団長が畳みかける。
「総統。ご提案があります。エレンの巨人の力は不確定要素を多分に含んでおり、その危険は常に潜んでいます。そこでエレンが我々の管理下に置かれた暁には、その対策としてリヴァイ兵士長に行動を共にしてもらいます。彼ほど腕が立つ者ならいざという時にも対応できます。」
「ほう……できるのかリヴァイ?」
「殺す事に関して言えば間違いなく。問題はむしろその中間が無いことにある。」
「――――議論は尽くされたようだな。」
ザックレー総統の言葉が、この場の終わりを告げようとした時、ナイル師団長が口を開いた。
「お待ちください……!エルヴィン、聞きたい。内地の問題はどうするつもりだ!」
「我々の壁外での活動は人類の安定から成り立っているのも理解している。決して内地の問題を軽視してはいない。そこで提案があります。事態の沈静化を計るためにも、次の壁外調査でエレンが人類にとって有意義であることを証明します。その結果で今後を判断していただきたい。」
「――――決まりだな。エレン・イェーガーは調査兵団に託す。しかし……次の成果次第では再びここに戻ることになる。」
こうして議会は終結した。
私は堪えきれずにエレンに駆け寄った。出血が酷い。
「エレン……!!すぐ手当するから……!」
「――――拘束を解いてやれ。ここからは調査兵団にエレンの扱いの全権をゆだねる。」
ザックレー総統の言葉で、エレンはすぐに拘束を解かれた。私は久しぶりに愛しいその子を、ぎゅと抱き締めた。
「頑張ったねエレン――――……。」
こうしてエレンはエルヴィン団長の描いた通り、調査兵団に属することとなった。