第108章 対策
「―――――エルヴィンさんは、姉さんを愛しているんですよね?」
「ん?なんだ突然。」
「――――答えてください。」
ロイの目は真剣だ。
何かを茶化したり、ふざけているようには到底見えない。この突拍子もない会話に、何を示そうとしているのだろうか。図りきれないまま、素直に本心を告げる。
「――――………これ以上ないくらい、愛してるよ。」
「――――なら、良かった。」
「どうかしたのか?」
「…………いえ。」
「難しい顔をしているぞ。」
私の言葉に、ロイは何かを深く頭の中で考え、思考を巡らせているようだ。
「――――僕は、エルヴィンさんになら、姉さんをあげてもいい。」
「――――それは光栄だ。」
「だから離さないでくださいね。逃がさないで。どこにも。」
強く発されたロイの言葉。
最愛の姉がいつ死んでもおかしくないような前線にいるんだと身に染みて理解したからか。怖かったのだろう。彼の小さな不安を拭うように、答える。
「ああ、そのつもりだ。」
「――――良かった。」
ロイはふふ、と小さく笑った。
ナナに似て人懐っこい笑顔だが、なぜかどこか冷えた笑みに見えたのは、気のせいだったのだろうか。