第107章 肯 ※
心地いいと思うのは、いけないことだ。
それなのにあまりにその腕が温かくて、身体を預けてしまう。いつも石鹸の香りが先に立つのに、汗の匂いが混じっている。息を切らして、最速で来てくれたんだろう。
もちろん私のためなんかじゃなく――――、人類を巨人から守るために。そして驚くべき強さで、私の大事な子達を守ってくれた。
「――――エルヴィンだが、今日は帰らないかもしれねぇな。」
「そう、なのですか……?」
「早速招集がかかってた。団長ってのは大変だな。同情する。真っ先にこうしてお前を抱きたいだろうに。」
「有事の際は寝る間もなさそうなので……またそうなると思うと、心配です……。」
私の呟きに、リヴァイさんはじっと私を見ている。なぜか仄かに不満そうだ。
「………何か……?」
「エルヴィンの心配より、てめぇの心配をしたらどうだ。」
「??」
その意味が分からず目で問いかけると、はぁ、とため息をつかれてしまった。
「――――言っただろう、俺に寝盗られねぇように気を付けろと。――――俺は今、そこそこ欲情してる。」
「…………。」
「簡単に男の部屋に引きこまれて、腕の中に収まりやがって。」
「…………。」
リヴァイさんの目を、じっと見つめ返す。
「エルヴィンもいないしな。不貞行為に興じてみようか、ナナ。」
リヴァイさんは私の両手首を壁に押し付けて、目を細めて私に熱っぽい視線を送る。私はそれを目を逸らさずに、ひたすら観察する。
「――――……おい、反応しろよ。いやだとか、やめてとか、だめとか……あるだろうが。」
「だって、リヴァイさんはしないから。」
私の言葉に、リヴァイさんは目を開く。その後すぐに、とても面白く無さそうに目線を他所に投げた。
「……………。」