第10章 愛執
「なぁリヴァイ。」
「………なんだ。」
「ビクターは、内臓破裂の重体だ。………あやうく、死ぬところだったぞ。」
「……お前がいなけりゃ、殺してた。あいつは運が良いな。」
「ビクターは、しばらくは搬送先の病院で入院だ。回復次第、退団手続きをとる。」
「………ああ。」
「ナナだが………殴られた時の顔と口内の怪我、腹部と背中の打撲以外は目立った重傷はないそうだ。まぁ……十分痛ましいがな……リンファのおかげで、事も最後までされずに済んだそうだ。」
「………そうか。」
「それよりも、心の傷の方が心配ではあるな。しばらく休養させて、様子を見よう。来月に予定している壁外調査への参加は見送る方向だな。………医療班編成の足掛かりに、ナナには調査の実態を見て欲しいと思っていたので残念だが、仕方ない。彼女の回復が優先だ。」
「………ああ。」
「……それで、ビクターへのお前のやりすぎた暴行についてだが。」
団長室のソファに向かい合って座る。エルヴィンは鋭い目で俺を見据えていた。
「何が、そんなに許せなかった?」
「何が、だと?女を無理矢理犯そうとした奴に、制裁を下したまでだ。二度と同じことができねぇように、教訓を込めてな。」
「そうだな。だが、お前の本心はそこじゃないだろう。」
「……あぁ?」
「例えば、あの場に組み敷かれていたのがナナではなく、別の女性兵士だったら?同じことをしたか?」
「……無論だ。」
「理由も聞かず、男を殴り飛ばした挙句、瀕死になるまで制裁を下すのか?」
「………………何が言いたい。」