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【進撃の巨人】片翼のきみと

第103章 850年




「――――ね、エレン……。あれから、イェーガー先生に会ったり…連絡がとれたり、した……?」



エレンの背に語り掛けるように尋ねると、一瞬ぴた、と立ち止まってエレンは答えた。



「………いや………。」

「………そっか……。」

「そ、そういえば、さ。」



エレンが少し言い出しづらそうに俯きながら言葉を選んでいる。



「ん?なに?」

「俺知ったんだ……調査兵団の人類最強の兵士、リヴァイ兵士長って人のこと……。」

「ああ。うん、そうだね、あの人は……すごいよ。」



私が微笑むと、気のせいかもしれないけれどほんの少しエレンの瞳に動揺が見えた。



「――――……恋人なのか?ナナの。」

「違うよ。」

「…………!」

「でもね。」

「…………。」

「離れ難い――――ずっと心の奥底に想い続ける、……特別な人。」



私の表情を読もうとしているのだろう。まじまじと私の顔を見る。けれど、読み切れなかったのか。

それはそうだ。私自身も、この想いになんて名前をつけていいのか、未だに分かっていないのだから。



「――――そっか………。」

「明日調査兵団が出立するときに、見れるかもね。」

「うん。」

「声援を送ってあげて。彼らの――――力になる。」

「……うん。」



そう言って2人、肩を並べて歩いた。

今夜は満月だけれど――――不気味なほど大きく、明るい。




血の色を思わせるような赤い月を見上げて、沸き上がる恐怖を抑えながら―――――彼らの無事を、神に祈った。





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