第9章 欲望 ※
「もう少し、休みな。」
ハンジさんは私をベッドに寝かせると、優しく頭を撫でた。
「ハンジさん……。」
「ん?」
「彼は……ビクターさんは……大丈夫ですか?」
「………リヴァイにあれだけやられたんだ。重体らしいよ。……ま、自業自得だけどね。」
「……そう、ですか………。………リヴァイ兵士長は………?」
「………今、エルヴィンと話しているよ。ビクターの処分をどうするか、とかね。」
「………きっと………面倒ばかり、起しやがってって………呆れてますよね………。」
「そんなはずないさ。」
「自分の身もろくに守れなかったんです……。怖くて、身体、動かなくて……。」
「当たり前だ!あんなことされて、怖くないわけないじゃないか……!」
ハンジさんは、私を強く抱きしめてくれた。
「知られたくなかった………!見られたく、なかった………!私が、あの時……おかしいって、気付いていれば……!不用心に、あんな場所に行かなければ……!」
「………ナナ、眠ったほうがいいよ。思考が悪い方に向くときには休養が必要だ。」
「どうしよう……もういらないって……足手まといは側に置けないって……言われたら………!」
「ナナ………。」
「私は、優秀な部下でいないと、リヴァイさんの側にいる資格がないのに――――――。」
「…………!」
自分でも恥ずかしいほど、ハンジさんの胸で泣いてしまった。ハンジさんはただ何も言わず、私を強く抱きしめてくれていた。
私は小さな子供のように泣きじゃくって、そのまま意識を手放した。