第102章 空想
「もし……外の世界に、いつか行けたら……」
「ん?ナナはしたいことがあるのか?」
「いっぱいあるよ。幼い頃に、リヴァイさんに宣言したから……リヴァイさんと並んで、その世界を見たい。本物の翼を持つリヴァイさんが、この閉ざされた世界から飛び立つのは、きっと……とても素敵で見惚れてしまうと思う。」
私の言葉にエルヴィンは拗ねるかと思ったけれど、エルヴィンは私と同じように、その空想を頭の中で展開しているように静かに私の頭を撫でた。
「壁の外に自由を求めるのに、リヴァイの力は不可欠だ。俺も見たいよ。あいつが、どんな顔をするのか。」
「それに文明が発展していたら、医療の発展もきっとすごいよね…!ロイも連れてってあげたいな。変化を好まない子だから、最初は嫌がるかもしれないけど。」
「確かにな。でも君と一緒なら行くと言いそうだ。」
「それとね、外の世界のお花も食べ物もたくさん持って帰って、マリアさんに見せてあげたい。それに、アランさんのお墓にも供えて。間違ってなかったと、報告しようね。」
「……俺の両親のことはいいのに。」
「良くないよ。」
「………………。」
「共に生きるんでしょ?あなたが大事にしているものは、私にとっても当たり前に大事なの。」
「ああそうか、そうだな。」
エルヴィンは眉を下げて少しだけ笑った。
体が重なる場所からじんわりとお互いの鼓動と体温が混ざっていき、エルヴィンの香水の匂いもまた、私に移っているのかもしれない。
それと同じように、お互いの大事なものを少しずつ理解して受け入れていく。私がリヴァイさんをかけがえなく思っていることも、時間をかけて受け入れようとしてくれている。だから私もエルヴィンが大事にしているご両親と夢と調査兵団を一緒に守っていきたい。
「ナナ、眠いのか?」
「ん……そう見える?」
「見えるな。君は俺とくっつくとすぐ寝るから。」
「エルヴィンにそう見えてるなら、そうなのかも……。」
「このまま眠ったらいい。夢の中でも、外の世界に行けるかもしれない。」
「うん、素敵……。」
「おやすみ、ナナ。」
私を包むエルヴィンの大きな手に誘われて、心地のよい眠りに落ちていった。