第102章 空想
849年の年末は恒例行事としての翼の日を終えて―――――その夜、毎年のように屋上で私は誕生日を祝う歌を歌った。
去年と違うのは―――――、はっきりと聞き届けてくれる人が、隣にいたこと。
「Happy Birthday to you………。」
歌声の余韻は、寒さの中で白く煙を巻きながら夜空に消えた。それを目で追うように見上げる私をリヴァイさんはしばらく見つめていた。
そして小さく、ありがとうな。と呟いて、私の髪を撫でた。
肩を並べて座って、しばらく無言のまま――――夜空を見上げていると、リヴァイさんが、口を開く。
「――――誕生日プレゼントをねだっていいか。」
「……はい!」
「期末に向けての雑務と資金調達、それに訓練内容の考案という毎日に忙殺されそうな俺を癒せ。」
「……え、いいんですか?」
「あ?」
「役得です。嬉しい。」
私が立ち上がって側に寄り、膝をついてリヴァイさんをぎゅっと抱きしめると、はぁ、とため息をつきながらもリヴァイさんは私に身体を預けてくれた。
ただ穏やかさの中にほんの少しの切なさを滲ませて。
「――――珍しくお前が温かい。お前の身体はいつも冷たいのに。」
「それだけ寒いんですよ。」
「そうか。」
「――――こんな寒い日に、リヴァイさんは生まれたんですね。」
ふう、と白い息が漏れる。