第101章 愛情
「ええと、何というか……、常人離れした身体能力と戦闘能力、とでも言うのでしょうか……。ずっと不思議で。リヴァイ兵士長もそうなのですが、動きの早さや強さと、筋肉量が釣り合ってないんです。」
「なんだそれは。」
ずっと不思議に思っていたことを、この機に少し口に出してみた。
「もちろん鍛えていらっしゃることは知っていて、十分な筋肉量なのですが――――、例えば、同じ体格で同じ筋肉量を持った人がいても、リヴァイ兵士長の動きをするのはきっと、不可能なんです。もともと人間の身体は、持ちうるものを全て解放すると筋肉が耐えきれずに断たれてしまったりするので、無意識にかけられる負荷に限界を作って制御しているんです。」
「――――………。」
「――――その制御をかけずに身体を使いこなせているのか、または筋肉の質がそもそも常人とは違うのか―――――謎のままですが、ミカサにも全く同じことを感じます。」
「なるほどな……。それは期待しておこう。」
「はい。」
「お前は次の壁外調査には出さねえが――――、トロスト区で会えると良いな、そいつらに。」
「………はい!」
紅茶の香りと、甘い香り。
今までリヴァイ兵士長の部屋に紅茶の香りはしても、甘い香りがすることはなかった。これもまた小さな、嬉しい変化だと口元を緩める。
ちらりと目線を上げると、リヴァイ兵士長と目が合った。
その口元はカップで見えないけれど、幸せそうに笑う私を見てリヴァイ兵士長もまた、微かに笑んでいるんだろうと思う。