第97章 燎
情報屋という職業を、ほんの少し後悔した。
年が明けて849年。
雪が降りそうな凍えるような日に、俺は王都から外れた郊外の川辺にいた。こんな辺鄙なところに、何もなければ人だかりなんてできない。
川から引き揚げられたのは――――――、見るも無残に顔を判別できなくされた状態の、女の遺体だ。
首を掻っ切られている。
「――――またか、物騒な世の中だな。」
「なにもあんな惨い殺し方しなくても……ねぇ……。」
「身元もわからないんじゃないか……?」
その凄惨さに野次馬もざわつく。
身元………わかるんだよ。
あの華奢な身体と、ゆるいウェーブのかかった金髪。
――――お前だろう、アリシア。
俺は何度も忠告したじゃねぇか、ナナに手を出すのはやめておけと。いや、ナナが危険なんじゃない。ナナを狙う輩が危険なんだ。
純粋すぎるお前が良いように利用されるのは目に見えていた。
お前はお前の人生を、生きれば良かったのに。
ナナにならなきゃ愛されないなんてことない。
俺はお前を、その一途さを、懸命に足掻く姿を―――――可愛いと、言っただろ。
「―――――くそ………っ………。」
やるせない気持ちを押し込めて、仕事に向かう。依頼主への報告義務がある。
――――この話を、リヴァイはどんな顔で聞くんだろう。