第95章 暗夜
年初めの休みにエルヴィンと共に王都の家に戻る。
送らなくていいと、1人で帰れると何度も断ったのに、聞き入れてもらえなかった。……まぁいいか、エルヴィンが来てくれたら、ロイが喜ぶ。
本格的な帰団まであと約半年。
家のことは方向性を変えてからは順調に整っていっている。予定通りこの大好きな兵団にまた戻れる日を心待ちにしながら、王都の門をくぐった。
「――――お嬢様、次の王宮での夜会に着て行かれるドレスが仕立て上がったそうですよ。試着に行かないといけませんね。」
「あ、そうね。」
母の代わりにオーウェンズを代表して、ボルツマンさんと私で夜会に出席をする。なんとかここで、ボルツマンさんと友好的に医院の分裂化を進めているということを印象付けておきたい。でなければ、私が家を離れてからのお母様の立場がまた辛いものになってしまう。
「――――俺も一緒に行ってもいいか、ナナ。」
「えっ、いいけど……良いの?退屈しない?」
「君のドレス姿を見られるのに、見惚れこそすれ退屈なんてするはずないだろう。」
ハルの前でも臆せずに甘い言葉をさらりと言う。
ハルはほぅ…とエルヴィンに見惚れるようにため息を零す。ここ一年で気付いたけれど、ハルは以前“断然エルヴィン団長を推す”と宣言していた通り、本当にエルヴィンのことが好みのようだ。
ハルの姿から、こうやって数多くの女性に甘い言葉を贈っては、この蕩けるような目をさせてきたんだろうと思うとなにやら腹が立ってくる。