第90章 心頼
―――――――――――――――――――
『お前じゃねぇんだよ。』
その言葉が頭から離れない。
じゃあ誰。
ナナさんでしょ?気に入らない。
私は知ってる。
表情を見てればわかる。
団長と恋人関係にあるくせに。
なんでリヴァイ兵長の心まで掴んで離さないの?
そんな馬鹿な事があってたまるか。
私なんて―――――、私なんて、たった一人にすら愛されたことなんてないのに。
定期的にリヴァイ兵長に会いに来ている男がいる。
その様子を見ている限り―――――リヴァイ兵長は、その男から何かの情報を買っているようだ。
その情報を知れたら―――――、何かを掴めるかもしれない。例えばその情報が離団しているナナさんの様子だったり――――――それよりももっと大きな秘密、かもしれない。
「――――欲しいな、その情報……。」
私はその男がいつも消えて行く方向で待ち伏せた。
案の定、なんの警戒もしていなさそうな、いかにも地下街出身という風貌の、素行の悪そうな若い男が通った。
こいつだ。
「―――――ねぇ。」
「……あん?」
「――――遊んでいかない?私と。」
「は………?」
「今私、暇で――――ちょっと、寂しくて。」
ゆっくり近づいて、その腕に絡みつくように両腕をまわしてその目を甘く見上げる。
豊かな胸を押し付ければ、大抵これ以上の言葉はいらない。
「――――なかなか嬉しいお誘いじゃねぇか。いくらだ?」
「――――タダでいいよ。」
「マジかよ。」