第90章 心頼
「――――公爵家に嫁ぐ気はないのか、勿体ない。」
「ないです。」
「即答か。」
「はい。私には愛する人がいるので。」
「――――命知らず集団のことか?」
「そうです。彼らと共に自由の翼を背負って戦い続けることが………人類の命運を切り拓いてみせることが、私の使命です。」
「――――母親と似て悪女の類だと社交界でも持ち切りだぞ?早くも調査兵団の団長が君に入れ込んでいるとか。」
ボルツマンさんの言葉に、母と目を見合わせて少し気まずい笑みをお互いに零した。
「――――君たちはその見てくれと頭を生かせばさぞ楽に生きられるものを―――――何をそんなに抗う?苦難に身を投じる?」
「――――生まれた意味を見出したいからです。」
母が、まっすぐ答えた。私もそれに倣って、答える。
「母と同じくです。」
ボルツマンさんはそんな私たちを見て、ふっと笑った。
「――――リカルドが落ちるわけだ。」
「??」
「―――――前向きに検討する。詳細の条件は今後話し合おう。まずは他の幹部を丸め込まないといけないからな。相当な取り分はこちら側に遺してもらわないと、彼らは納得しないぞ。」
「…………!はい!!」
初めてお互いグラスを掲げて同意の意志を交わし、その日の会食を終えた。