第89章 溺愛 ※
ハンジさんが言った、“エルヴィンに助けてと言っていい”“私もナナに頼られたい”という言葉は随分と私の心を軽くしてくれた。
翌月の王都招集の時は、エルヴィンに私の家に泊まってもらうことにして、ロイやお母様と共にこの現状をどうしていくのか、話し合う場にいて欲しいとお願いをした。
面倒だと思われないだろうかと少し不安に思っていたものの、返って来た返事は快諾どころか―――――――
「――――やっと、頼ってくれた。」
この上なく優しい目をして、そう言いながら私の髪を優しく撫でてくれた。
私は長女で―――――この家に生まれて、父も母もいない日々の中、何が起こっても自分でなんとかしないといけないと、頼れるのは自分しかいないとずっと思ってきた。
それをエルヴィンやリヴァイさん、ハンジさんやミケさん、調査兵団のみんなが溶かしてくれた。
――――頼る。
私にとってとても難しかったそれを、勇気を出して声に出せば、こんなにも受け止めて同じ方向を向いて一緒に考えてくれる人がいるということを知って、私は救われたんだ。