第88章 自涜 ※
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―――――執務室に帰ってきて、溜まりに溜まった執務に手を付けることもなく自室のベッドに倒れ込んだ。
胸中に渦巻くどす黒い欲を感じて、異常なまでに不愉快だからだ。
「―――――クソが………。」
ナナが調査兵団に来る前までは、こんなことは日常茶飯事だった。
気が向けば言い寄ってきた女を抱いて性欲を発散して、後腐れなくそれで終わりだ。
ナナを得てから―――――、いや、俺のものじゃなくなってもなお、他の女に触れられないのはまるで呪縛のようだ。別にナナが“他の女を抱くな”と禁じたわけでもない――――俺が勝手に、ナナに縛られているのか。
――――ナナが帰ってきたら、今度こそ添い寝だけじゃなく、“性的な意味でナナを一晩貸せ”と、エルヴィンに言ってやろうか。
どんな顔をするだろうな。
さぞかし蔑んだ目で俺を見るだろう。
ナナはどんな顔をするだろう。
エルヴィンが許せば応じるのか。
それとも頑なに―――――俺を拒否するのか。
その拒否する姿を想像しただけで、下半身に血液が集中する。
そう、嫌がるナナを押し付けて暴いて―――――泣きながら「やめて」と懇願するナナに、その体内に、俺を埋めてやる。
ぐちゃぐちゃにかき回して、突きまくって―――――おかしくなるほど鳴かせてやる。
エルヴィンへの罪悪感で涙を流すのとは裏腹に、淫乱な身体が悦ぶことにまた罪の意識を抱きながら―――――美しく淫らに、堕ちていけばいい。
そんなクソみてぇな妄想をしながら、下半身に手をやる。
自慰は趣味じゃない。
虚しくなるだけだ。
―――――なのに、抑えられない。
「……は………っ…………ナナ、………ナナ………っ…………ナナ………。」
半分は今まで肌を重ねた時の表情や声、その身体の感触を思い出しながら、もう半分は自分の願望を含めた想像の中でナナを犯しながら、自身の昂ぶりを抑えるために息を荒げた。
一生ナナしか愛せないと――――どんな崇高なことをほざいても、所詮欲は切り離せねぇんだろう。
くだらねぇ。