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【進撃の巨人】片翼のきみと

第87章 私欲




「今回はまずまずの成果だったな。トロスト区からウォール・マリアへのルートとしては、今回のルートが最有力だな。」



壁外調査後、諸々の情報を総合してエルヴィンが総評した。

確かに悪くなかったが、復路で索敵が一つ全滅したのはルート改善の余地を残している。俺はそれを述べた。



「……ああ、だが復路にウォール・マリアから北西部に位置する森に、左翼の索敵が干渉していた。最左翼十三か。全滅している。遠目に見たが、あの森は光が射さず見通しが悪い。干渉しないよう、若干遠回りではあるがもう少し東を迂回したほうがいいだろうな。」

「――――俺も同意だ。森からの急襲だったようだ。紫の煙弾を頼りに援護に行ったがもう―――――遅かった。一瞬でやられたと見える。」



ミケが昏い表情で同意し、ハンジが殉職者名簿を見て切なげに目を細めた。



「――――最左翼索敵か……レノ、アラン、オリヴィア、ライアン、イルゼ………。」



――――イルゼ。あいつ、死んだのか。



「――――そうだな、リヴァイの言う通りだ。他にルートに関して進言はないか?」

「ねぇエルヴィン、どうせ東を迂回するならさ、確か村があった気がして。そこを補給拠点とかにできないかな?」

「確かに悪くないな。次の壁外調査ではそこの下見も含めたルートをとってみようか。」



今回も多くの犠牲を払って壁外調査は終了した。

来たるウォール・マリア奪還のための下準備とはいえ、いつになるかもわからない作戦のために命を落とす仲間のことを思うと――――少なからず、内に薄暗い影が差す。



「ねぇリヴァイ、ミケ。調査前に話してたんだけどさ?今回は私たちを癒してくれるナナもいないし、ぱぁっと4人で飲みにでも行かない??」

「いいな。久しく飲みに行っていない。賛成だ。」

「―――ああ、悪くねぇ。」

「決まり!!」



エルヴィンもどこか少し嬉しそうに、口の端をほんの少し上げた。



その夜、俺たちは4人揃って酒場へ出かけ、ここ数か月の鬱憤を晴らすように酒を煽った。

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