第85章 逢瀬 ※
暖かな日差しが降り注ぎ、木々が青々と繁る4月。
私は兵団本部の前で待っていた。
「ナナ、待たせたか?」
「――――いえ。」
中から迎えに来てくれたのは、エルヴィン団長だ。会うのは一か月ぶりだ。
……思わず少し化粧をしてきてしまったけれど、変じゃないだろうか……やっぱりいつも通りにしてくればよかったかなと、小さく後悔する。
「行こうか。ちょうど会議も終わって、ザックレー総統とピクシス司令が君に会いたいと言っている。」
「はい!」
エルヴィン団長の後ろをついて歩くと、気のせいか色んな人の視線が降り注いでいる気がする。そうか、私が兵服じゃないから……誰かわからないのかな。そんなことを考えながら進むと、ザックレー総統の部屋に通された。
「―――ナナ。久しぶりだな。」
「ザックレー総統、お忙しい中お目通りを叶えていただき、ありがとうございます。」
「はは、固い挨拶はよせ。……いやそれにしてもなんだな。服が違うだけで随分印象が違う。どこからどう見ても今日は―――――、オーウェンズのお嬢さんだな。」
シックなブルーグレーのワンピースに身を包んでいたからか、くすぐったい言葉をかけられた。
「このような恰好で恐縮です。」
「――――災難が続いたとエルヴィンから聞いていたが。元気そうで安心した。」
「おかげさまで、もう大丈夫です。」
「――――中央憲兵の動きはないか?」
「はい、今のところ何も。私の事を危険分子ではないと、理解してもらえたのなら良いのですが。」
「――――それはどうかな。私にも君は完全な白には見えていない。」
「…………!」
ザックレー総統の鋭い視線に、心臓が小さな針でも刺されたかのように小さく違和感を覚える。