第82章 深愛 ※
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時折ナナがぴく、と眉間に皺を寄せるのに気付いていた。――――痛むんだろう。なのに、ナナを貪ることをやめられない。
俺の理性はこんなに儚いものだったか、と自分を呪う。
やがてナナは痛みであったはずのその感覚までも全て一緒に快感として受け入れはじめ、焦点の会わない潤んだ瞳と、半開きになったまま吐息を漏らし続けるその唇で俺を煽る。
「――――君は―――……俺の、ものだ………ずっと――――……!」
まるで子供の我儘のような言葉が自分から発せられていることにも驚く。
自身を埋めて激しく抽送しながらナナに覆いかぶさってその唇を奪い、息継ぎの合間で刷り込もうとしているように俺のものだと囁く。
ナナは全てを受け入れるように、柔く笑んで口づけに応える。
この小さな体で、この包容力はなんだろうか。
ナナのこの全てを受け入れてくれる愛情深さが、悪い男を調子に乗らせるんだ。
ギシギシと軋むベッドの上で、怪我の治りきらない痛々しい身体のナナを何度も何度も抱いた。
手に入れた当初は結婚という契約で彼女を縛ることも選択肢にあったが、今こうなってみてはもう、俺は神の前で愛を誓えそうにない。
『死が二人を分かつまで、愛することを誓うか』
―――――誓えない。
そんなもの、誓えるはずがない。
例え死が二人を分かつ時が来ても、俺はナナを離したくない。
俺と共に生き、俺と共に死んでくれと――――――そう思うんだ。
けれどそんなことを言ってしまえば、君はきっと本当に俺が死ぬ時に添おうとするだろう。律儀すぎる、純粋すぎる君だからこそ心配になる。
だから俺達はなんの誓いも約束もないままこの先の未来を歩いていく。
それで良かったのだと思う。
――――――俺は本当はリヴァイを笑えないほどの相当重い厄介な男だったのだとこの歳になってようやく知って、その事実に自嘲の笑みを零した。