第81章 落月屋梁

「――――自分を責めるなよ。ナナが自分を許さない、それは――――リンファの覚悟を、決断を、否定していることと同じじゃないか。」



「―――――………。」



「――――なぁ……っ………お前が、笑って―――――幸せに、生きてくれなきゃ―――――……リンファは、浮かばれねぇだろ………！あいつの分まで俺たちは、どんなに……っ………辛くても―――――……、生きてかなきゃ、なんねぇんだよ………っ………！」





サッシュさんが俯いた。廊下に、ぽたぽたと、次から次に水滴が落ちる。





「――――ごめん、情けねぇよな………っ………！」





絞り出すような声に、小さく頭を横に振って――――――、その手に、掌を重ねた。私たちの涙は重なり合って、じわりと床に染み入っていった。

しばらく２人の嗚咽が廊下に響いて―――――、サッシュさんが私を見上げた。




「―――――はは、ひでぇ顔だ。」



あなたも。と意味を込めて、拭う事もせず涙でぐしゃぐしゃな顔のまま、小さく微笑む。





「―――――生きよう、ナナ。リンファの分まで。」



「――――………。」





サッシュさんの力強い言葉に、深く頷いた。

リンファに恥じないように私たちは、また前を向くから。じゃないとリンファにきっと『なんて顔してんの！しっかりやんなよ！』とでも、叱られてしまう。