第81章 落月屋梁
「そのついでにナナ食べられてない?大丈夫??」
「………??…………!!!!」
少し考えてその意味を理解した瞬間、口移しで食べさせてもらっていたことが脳裏をよぎって顔が赤くなる。思わず俯くと、エルヴィン団長が弁解した。
「いやいやナナ、その反応はおかしいだろう。怪我人に対して何もしてないぞ私は。ハンジ、余計な詮索をするんじゃない。」
「はははっ、わかったよ。――――良かった、もっと苦しんでいて、重苦しい空気だったらどうしようかと思っていたから。――――エルヴィンの大きな愛のおかげかもしれない。安心してナナを預けられるよ。」
「………それは光栄だ。」
「あぁごめんナナ!お手洗いかな?一人で行ける??」
こくこくと頷いて、団長室をそっと出た。
心配をかけてしまうから、あまり誰にも会いたくない。
ちょうど今はみんな訓練に出ているから、きっと誰にも会わなくて済む。お手洗いから戻る時に、廊下の窓からみんなを見つめる。
壁外調査の後の―――――がらんとした訓練場は何度見ても、胸が苦しくなる。そこにリンファも――――――ロキさんも――――――、そして、ナターシャも…………いないんだ。
何度も何度も仲間の死を見て来たはずなのに……慣れない。
いつも震えと涙が止まらない。
これは私が弱いからなのか。
窓の外に、サッシュさんの姿を見つけた。どれほど辛かっただろう。それなのに―――――、訓練に、一層の熱意が見られる。彼もまた、すごい人だ。
そう思いながら目で追っていると、視線に気付いたのかサッシュさんが私のほうを見上げた。思わず、身体がビクッと震える。
サッシュさんは目を見開いて、近くにいた仲間に何かを急いで事づけると、また私のほうを見て兵舎の入り口の方へと走り出した。
どうしよう、ここから去るべきか―――――、でも、きっと私に言いたいことがあるから来るはずだ。大好きなサッシュさんになんとなじられても、責められても仕方ない。ちゃんと向き合うしか、私にはできないから――――――……