第78章 抗
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「――――何を、考えている?」
「――――作戦の成功と、大事な仲間が無事でいられるように、祈っています。」
不意にナナが後ろから私を抱き締めてきた。こんなことは珍しくて、思わずその意味を問う。
「――――そうか。」
「あとこれは――――おせっかいかもしれませんが。」
「ん?」
「あなたが辛くなったら―――――、泣きたくなったら、胸を貸しますよ。いつでも。」
ナナの言葉の意味を一瞬整理して考えてみる。
私は辛そうに見えているのか?泣きそうな顔でもしていたのだろうか。
「そんな風に見えるか?」
「ううん、見えない。――――だから怖い。」
「………そうだな、じゃあ2人共生きて帰って来たら―――――、聞いてくれるか?俺の泣き言を。」
「もちろん。」
ナナは柔く笑んだ。
―――――本当に困る。
何度も言っているじゃないか、調査の前は昂るんだと。
ナナの声とこの香りと、柔らかな身体を抱き締めたくて、強引に腕を引いて膝の上に引き寄せて腕の中に閉じ込めて強く抱く。
ナナは抵抗することもなく、俺の胸に身体を預けた。
いくらしばらく離団する前の最後の調査だからとは言え、律儀なナナが執務中にこんな態度を見せることは今まで無かった。
なにか察知しているのか――――――、俺は少し、この壁外調査の行く末を案じた。