第78章 抗
ナナが戻って数日後、今回は私一人で王都招集へ赴いた。
2月の壁外調査は夏の大規模な壁外調査に向けての補給物資運搬と長距離索敵陣形の改良効果を測るための意味合いで実行する。その概要を報告した。いつものことながら、議会では壁外調査の事前報告にも事後報告にも興味を示す者はほとんどいない。
淡々と報告を終えた後、ザックレー総統から例の件について追及を受けた。
「よくわかった。次の調査も宜しく頼みたいところだが――――――。壁外に行く面子を変えねばならんような報告が来ている。――――中央憲兵から調査兵団の素行についての疑念の声と共に、事情聴取のために出頭せよとの通達が来ているんだが、エルヴィン。」
場内が一気にざわついた。
壁外調査の報告時には静まり返っていたくせに、誰かを吊し上げる問題に関してはどうやらオモシロイらしい。
「……詳細をお聞かせ願えますか。」
「報告内容はこうだ。『1月22日 ウォール・シーナ近辺の街に脚の腱を切られる等の重症を負った一般市民2名が病院に搬送され、いずれも調査兵団・リヴァイ兵士長と団長補佐官ナナ・オーウェンズ、その他1名の兵士の関与が目撃されている。調査兵団の素行を危険視するとともに、一般市民に重傷を負わせた容疑により、事情聴取のために該当兵士を出頭させよ』とのことだが。」
ザックレー総統はいつものごとく面倒そうにふーーーっと息を吐きながら、その紙切れを読み上げた。
「その件について把握しています。結論から申し上げますが、兵士を出頭させる気はありません。危険と言われる素行については、いたたまれない事情―――――正当防衛を主張します。」
またもや場内がざわつく。
「――――今日はその補佐官を連れていないのは、何か理由が?ここで正直に話せば良かっただろう。」
ザックレー総統の問に、再燃しそうな怒りを抑えて平静を装う。