第75章 再燃
なんとか抵抗の言葉を述べると、リヴァイさんは眉間に皺を寄せて不愉快極まりないといった顔を見せた。
私の顎を押し上げて首筋を晒して、そこに齧りつく。
赤い痕を散らすどころか、ぎり、と犬歯を食い込ませて歯形と共に印を刻まれているのがわかる。
「――――怪我してて良かったな。怪我がなけりゃ―――――、ビクターじゃなく……俺がお前を犯してた。」
―――――――うそつき。
こんなに感情を露わにするのは、私が怪我をしたことで自分を責めているその心の、ぶつける場所がわからないからでしょう?
私が怪我なんてしなければ――――、自分の身をちゃんと守れていたら、きっと何事も無かった顔をして、あなたは兵士長の仮面をかぶり続けてくれていただろう。
いつまで経っても弱くて、とても横になんて並べない私で、ごめんなさい。
あなたを傷付けて、ごめんなさい。
1年半――――あなたの顔を見られなくなることが、寂しくもあった。
けれど、きっととても良い機会なんだ。
会わなければ、傷付けることもしなくて済む。
――――もしかしたら、私よりも愛すべき人を、見つけるかもしれない。
そう思うと、心臓がギュッと縮んで、無意識に彼の頬に触れていた。
「―――……もう一回だけ――――………。」
手を伸ばして、口付けを乞う。
抵抗したくせに、なんなんだと思ったんだろう。
リヴァイさんはとても驚いたように目を見開いて、切なく目を細めて、応じてくれた。
ついさっきとんでもなく物騒なことを言った唇とは思えないくらいの、甘く甘く、優しいキスだった。
「――――……このまま――――拐っちまいてぇよ…………。」
その合間にほんの小さく囁かれた言葉を冗談めかして笑うことが、できなかった。