第72章 再生
背伸びをして、ロイを強く抱き締める。
首に手を回して、強く強く。
その柔らかな髪を撫でながら、過去の痛みを認めるように、思い起こす。
「覚えてる?ハルもいなかった夜――――雷がすごかった。―――――2人で震えながら一緒に布団にくるまって、泣きながら歌を歌った……。まるで、世界に私たち2人だけ取り残されたみたいだった……、怖かったね。」
「…………。」
「学校の参観日――――、お父さんとお母さんに挟まれて手を繋いで帰る友達を見て、私たちはお互いの手を強く握って、黙って帰った。――――とても寂しくて―――――辛かったね。」
「…………。」
親への恨み言を、生まれて初めて言った。私の告白に、父と母は俯いて震えていた。
「たくさんたくさん、辛くて――――寂しくて―――――、誰からも愛されてないのかなって、不安になった。でも今は――――あの頃の私たちとは、違うでしょう?ロイ。」
「――――………。」
「お父様とお母様の愛を探してただ泣いているだけの私たちじゃない。確かに寂しかったけど――――、辛かったけど――――、2人で迷って、ぶつかって、傷つけあって、壊し合って――――手を取って、ここまで来たじゃない。」
ロイの心に届いて欲しいと言葉を紡ぐ。
でもそれは、自分自身への暗示のようにも思えた。
「――――心から思うの。私たち、姉弟で良かった。決して強くない私たちは……一人で耐え抜くには過酷すぎる家に生まれたみたいだから。」
ふふ、と笑って見せると、ロイは静かに私の目を見た。
その目からは、透き通る美しい涙がぼろぼろと零れている。
鏡を見ているようだ。
ロイの目に、ぐしゃぐしゃに涙を流す私がいる。