第68章 商会
「――――俺も聞きたい、ナナ。」
「はい、なんでもどうぞ!」
「――――リヴァイの側にいてやる選択肢は、もうないのか?」
「――――――…………!」
思いもよらない言葉に躊躇した。
「それは……どういう意味でしょう………。」
「この世界の真相を解き明かして人類に自由を齎すためにエルヴィンの力は不可欠だ。それをナナが支えることでよりエルヴィンの力はより生きてくる。それはわかる。だが―――――自由を勝ち取った後―――――、もし俺達が……リヴァイがこれ以上戦う必要がなくなったら。リヴァイは本来ナナだけをその手で守りたかったはずだ。その腕の中に―――――戻ってやることはないのか?」
「―――――………。」
「俺はエルヴィンも大事だが、リヴァイも大事だ。リヴァイが団長室の扉を蹴破った理由を最も的確に、すぐに理解してそれを代弁したナナに――――――側にいてやって欲しいと、思った。」
胸が苦しい。答えられない。
「それは………。」
「俺の目には、リヴァイもナナも――――――愛し合っているように見える。」
―――――言葉の威力というものは計り知れない。それが、自分達を近くで見て来た、信頼している人からの言葉なら尚更だ。
でももう決めたことだ。
例えミケさんの願いであっても、それは曲げることはできない。
「――――エルヴィン団長の事を、愛しています。」
ミケさんはスン、と鼻を鳴らした。
「それも、確かに本心だ。」
「リヴァイ……さんの……ことは――――――………。」
「…………。」
言ってはいけない。
絶対に。
これ以上口から出せば、それはまた息を吹き返して―――――真実になってしまう。
「―――――そんなに苦しい思いをしてまで封じると決めたんだな。――――悪かった。もう聞かないし、言わない。ナナの信じるようにする事が一番大事だ。」
涙を溜めてミケさんを見上げる。
ミケさんは困ったように眉を下げて、私の頭を撫でた。
「――――さあ、行くか。」
「はい……。」
私たちは再び馬を駆った。