第67章 下準備 ※
毎日届く封書の中には、各兵士に宛てたファンレターや激励の手紙が多い。
中でも幹部に宛てたものは多いが、最近リヴァイに次いである人物への会食の申し込みや会いたいと言った類の手紙が増えた。西部調査や訓練兵団への勧誘行脚に行ってからだ。
その数々の封書を眺めて、腕を組んでため息をつく。すると、団長室のドアがノックされた。
「―――――エルヴィン団長。ナナです。」
「――――ああ、どうぞ。」
慌ててその封書をまとめて引き出しに隠す。その仕草に、敏感にナナが反応した。
「――――??今何か、隠しましたか……?」
「――――いや?」
「そう、ですか……。」
夕日が沈んで夜の帳が降りようとする頃、彼女は団長補佐の執務のために部屋に来る。
私の返答に若干の違和感を感じているといった表情のナナの頬には、擦り傷と少しの泥がついていた。
「――――どうしたナナ。」
頬をトントンと指しながら示すと、自分の頬を触ってハッとしたようにわたわたと慌てる。
「ごめんなさい、こんなお見苦しい顔で―――――!」
「いや、対人格闘術の自主練習か?」
「……はい。」
ナナは顔を赤くして小さく俯いた。
「――――おいで。手当をしないと。」
「いえ、そんな……かすり傷なので舐めておけば治ります。」
ナナの言葉に思わず噴き出した。
「――――とても医者の言葉とは思えないな。はは、しかも………どうやって舐めるんだ。」
「………確かに………。」
ナナも少し笑った。
「――――おいで。」
もう一度呼ぶと、ナナは観念したように側に寄って来た。
ハンカチでそっと泥を拭う。