第66章 垂訓
「待て、待てよ……!それはアーチ、お前がさっき俺の家で書いた――――――――!」
「そう。あんたの家の紙と、ペンで。あんたの血判付きだ。これ以上の証拠があるか?」
「待て、なんで………!復讐か?!リンファの?!」
脂汗を大量に流しながら、瞳孔まで開くように目を見開いて必死に訴える。
―――――苛立つ。
汚い。
汚い。
汚い。
「…………汚い口でリンファを呼ぶな。殺すぞ?」
殺気を込めて胸ぐらを掴んでも、命の危機を感じての半狂乱ぶりに俺の声も耳に入っていないようだ。
「なんだよ!!あんな売女の娘なんてロクな生き方できねぇだろうが………!それを可愛がってやっただけだ!!!あいつも喜んでたよ。役に立ててさぞかし満足――――――。」
――――俺は思いきり男の顔面を蹴り上げた。血が飛ぶ。ああ、訓練兵のあの時のようだ。
「―――――殺してやる。ゴミが―――――。」
兵舎に連れ帰って尋問するまでもない。ここで殺してやる。そう思った時、サネスさんが俺をたしなめた。
「――――駄目だアーチ。………こいつが許せないんだろう?」
「………っ………!」
「死んだ方がマシだと、思わせてやろうじゃないか。――――憎い憎いこいつが、『殺してくれ』と懇願する様はきっと―――――見ものだぞ?」
「―――――………。」
俺は小さく頷いて、男を拘束した。耳元でサネスさんが嬉しそうに囁く。
「―――――ようこそ、アーチ。中央憲兵へ。君なら―――――すぐにこの世界の鍵となる秘密さえも、我々の王から賜ることができるだろう。」