第66章 垂訓
「―――――アーチはあたしの秘密を知って―――――それがトラウマになってる。そのせいであたしを守ってやらなきゃって、躍起になってる。そしてあたしがサッシュを好きで――――あの子の気持ちに応えられないことも苦しめてる………あたしはまるで―――――アーチを苦しめるために存在してるみたいだ………。」
「―――――………。」
「―――――……聞かないの?あたしの秘密。」
「―――――……だいたいの想像はついてる。」
「――――!!」
その言葉に驚いた。
まさか。
今まで知らないふりをしていたのか。
全く顔にも出さず、同情も見せずサッシュが振る舞えるなんて、意外だった。
「訓練兵1年目の休暇で実家に戻った時に―――――……お前を探してお前の親父が家を訪ねてきた。その目が―――――異常だと思った。胸糞悪ぃ、良くないものに見えた。それとお前の様子―――――、アーチが必要以上にお前の事を心配してたこと、………お前が訓練兵になってからの様子を見ていて、仮説が徐々に確信になった。」
「――――あんたにしちゃ、鋭すぎる……。」
「は?なんだ馬鹿にしてんのか?」
「ふ………。」
シリアスな場面でもやっぱり悪態のつき合いになることが面白くて、嬉しくて、小さな笑みがこぼれる。
「―――――そんぐらい、お前の事ちゃんと見てんだ。甘くみんな、俺を。」
「――――………。」
そこまでわかっていて、こんなに情に脆い、感情的になりやすいサッシュがなぜあたしに同情や憐みの目を向けて来なかったのか、不思議だった。