第61章 謬
壁外調査が数日後に迫ったある日の幹部会。
作戦の最終の確認がなされ、皆さんが一段落した時にそれは告げられた。
「―――――一つ、憲兵団のナイル師団長からの情報で気になることがある。」
「あ?」
エルヴィン団長は私の報告したサッシュさんの異変も、包み隠さず皆さんに話してくれた。少し変わろうとしてくれているのが分かって、私は嬉しかった。
ただ――――――次のエルヴィン団長の言葉で、嫌な不安に駆られることになる。
「――――サッシュの弟、アーチだが………。憲兵団には存在しない。」
「―――――え………?」
思わず声を漏らしてしまった。
けれど、リヴァイ兵士長は動じることなく推察を述べた。
「――――中央憲兵に抜かれたんじゃねぇか。優秀だったなら―――――ありえることだ。」
「………昨年の西方訓練兵団の、成績トップだったと……聞きました……。」
「じゃ、十分あり得るね……。」
「そしてサッシュが不自然に、ナナの生い立ちについて質問をしてきた、と。察するに―――――中央憲兵団の初任務で、“外の世界の情報を持つ白髪の少女”の行方をそのアーチが担ってるってとこか。」
ミケさんが核心を突いた。
「だろうね、きっと。」
「………サッシュが馬鹿で助かった。そこまで分かってりゃ手が打てる。そして――――サッシュにそんな事を垂れ流す弟も、馬鹿ってこったな。」
「それがわざと、じゃないといいがな………。」
エルヴィン団長は少しの不安の影を落とした。
「………わざと狙ってるって情報を流して、奴らに益がある……?」
ハンジさんは顎に手を当てて呟いた。私も同感だ。
ただ警戒が強まるだけだ。そんな事をして、何になるんだろうか。