第11章 おとぎ話のシンデレラかよ。
なので先ず落ち着いて話しが出来る場所に移るとするか…怪我の治療もしたいし、放っておいたら化膿するかも知れねぇしな。そう頭の中で考えを巡らせながら、近くにあるセーフハウスの1つを思い浮かべる。一度スーツの上着を脱いで栞の艶のある頭へと被せると、横抱きで優しく持ち上げる。いや…軽っ…えっ?女の子ってこんなに軽いものだった訳?骨格が細いから、力加減を間違えただけで直ぐにでも折れそうなんだけど?そう未知との遭遇に驚きを隠せないでいた。泣いていた栞もまたきょとんと目を丸くさせて涙が止まる、そして恥ずかしそうに頬を赤く染め上げ下ろさせてと身を捩っていた。
「へっ?」
「ずっとここにいても仕方ねぇし、先ず栞が落ち着ける場所に移動しようか」
「あの…私、歩けます」
「だぁめ♡怪我してるからなぁ?後、顔は隠しとけ?見付かるとまた厄介だし、変な連中から声を掛けられたくねぇだろぉ?」
恥ずかしがる栞を見つめ、可愛いなぁ…とニヤニヤしてしまう。まぁ…本当に怪我の心配はしているし、栞を他の男の視界に入れたくなかったからという理由を少々オブラートに包んで説明する。いい子ちゃんな栞はまた深くスーツを被り直しており、落とさないようにゆっくりとネオン街を歩いて行く。あぁ…今日はすこぶる機嫌が良い、とても可愛い拾い物をした。彼女をそっと覗き見れば、不安そうにギュッと目を閉じており整った顔からは作り物めいた美しさがある。俺はその華奢な柔らかさを堪能し愛おしさが込み上げて来て、そっとスーツの上着から優しくキスを落とした。