第11章 おとぎ話のシンデレラかよ。
艶のある髪がネオン街でさらりと靡いた、カツンとヒールが脱げてコロコロと地面に転がるヒールとそのまま走り去って行く女の子…その横顔が余りにも綺麗で、ヒールを拾った俺は笑いがこみ上げて来た。
「ふはっ、おとぎ話のシンデレラかよ…」
23.0cmと彫られたのヒールを見下ろして、本当に小さいなー…と先程の女の子を思い出しながらヒールをぷらぷらさせる。あの足じゃ遠くには行けないだろうし、多分近くにいるだろうと周辺をぶらりと探索する。その時路地裏で必死に息を殺して蹲る女の子がいて、おっビンゴ。とほくそ笑み音もなく近付いて行く。そしてヒールを彼女の前へ差し出した。
「お嬢さん、ヒールを落としましたよ♡」
「……っ」
「ははっ♡そんなに緊張すんなよ、取って食う訳じゃねぇんだしさ…」
不安げに見上げて来る女の子の目線まで体を屈ませて、座り込んでいる彼女の脚を持ち上げる。タイツが破けてしまい血が滲んでおり、色白の綺麗な足に傷が出来てしまっていた。怪我なんて全く無縁な世界で過ごして来たという華奢な体を思うと少しばかり悲しく思える。
「怪我、してるな…」
「……」
「痛い?」
「……痛くは、ないです」
「嘘ばっかり…」
「いたっ…」
目の前で痩せ我慢している女の子に対して、直ぐに嘘だなと気付いた俺は少し足を掴んでいる手に力を込めた。すると痛みに顔を歪めた女の子をいて、もっと頼ってくれねぇかな…なんて柄にもなく思ってしまったり、また新しい物を買えば良いか。とポケットチーフを胸元から取り出して軽い止血程度に彼女の足へと優しく巻いて結んだ。驚いて見開く女の子と俺の視線が絡み合う、星を散りばめたようなキラキラした瞳に目が離せなかった。