第10章 if…快適過ぎて逆に困る(2)
「ひゅっ、はぁ、はっ、た…すっけ…」
「栞…?…まさか、過呼吸…っ」
「あ…ぁっ…ぃ、き…できなっ…」
「栞、大丈夫…大丈夫だからな?後で殴っても良いから…今だけは許せよ?」
そう竜胆さんは私を引き寄せて、背中をとん、とんと一定のリズムを刻んで撫ぜる。ボロボロと泣いて竜胆さんに縋る私へ、安心させる声で大丈夫だと何度も言い聞かせた。しかし未だ竜胆さんの声が聞こえず軽くパニックに陥り、上手く呼吸出来ずにいる私がいる。
「栞、こっちを見ろ?」
「ひゅー…ひゅー…」
「大丈夫。俺が栞の不安を全部助けてやるから先ずは落ち着こうか」
「ぅっ、ふぅ…ふっ…」
「良し、いい子だな…それじゃあ次はゆっくり息を吐けるか?」
心臓が聞こえるように抱き寄せられる。ドクンドクンとゆっくり伝わる心臓の音に漸く落ち着きを取り戻しつつある私に対して、次はゆっくり息を吸って、吐いてと教えて貰い竜胆さんの声と同じように深呼吸を繰り返す。竜胆さんは私の気持ちが落ち着くまで片時も離れずずっと背中を撫で続けてくれた。
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最初から色々と迷惑ばかり掛けた私を竜胆さん、ううん…竜ちゃんは本当に私の全ての面倒を見ると申し出たのだ。信じて貰えただけでも有難いのに、彼は私をそのままマンションへ住まわせてくれて甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。