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取り敢えずケーキが食べたいです【東卍夢(梵天)】

第10章 if…快適過ぎて逆に困る(2)


「ふぅ…ここまで来れば大丈夫そうか」
「はぁ、はっ…はぁっ…」

胸元を握り締め、浅い呼吸を何度も繰り返す。咳き込む私にお兄さんはビクッと大きく体を震わせて、背中を優しく撫でてくれた。

「はっ…すみ、ませっ…」
「いや、悪い…」

未だ手首を掴んでいるお兄さんは驚きながら手を離した。しかし直ぐに顔色を真っ青にさせていく、私の手首へ視線を向けていた為、どうしたのかと私も視線をそこへ目を向けて見る。わぁ…凄いアザ。良く折れなかったな…と言えるくらいにくっきり付いた手のアザに映画とかのホラーで良くありそうだなと他人事のように思った。

「ご、ごめっ…」
「大丈夫ですよ、寧ろ助けて頂いてありがとうございました…」
「いや、でも…直ぐに冷やさねぇともっと酷くなるだろ。あ…あのさ、俺の住んでるマンションが近くにあって…警戒するのは分かるんだけど、そんな事するつもりは絶対ねぇって約束するし…」
「……お兄さん、お名前は?」
「えっ…灰谷竜胆、だけど…」
「竜胆さん…私は水無月栞と言います、あの…もし宜しければ、マンションにお邪魔させて貰っても構いませんか?」

多分だけど、目の前にいるこの人は悪い人じゃなさそうだと思った。先程の男達見たいにギラギラした目で私を見つめて来る様子はないし、私を助けてくれた事も含めて…今だって私の腕のアザを酷く心配している見たいで、私よりも悲しそうに眉を下げて泣きそうに眺めているから、ついついその優しさに絆されてしまったというのか。私の申し出に対して少し嬉しそうに目を細めてくれて、本当にごめんな?と謝られてしまうから、その優しさに何故かどうしようもなく竜胆さんの傍が安心出来た。
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