第7章 総長と参謀
「!オイ、ユウ」
ドラケンが止めるのも聞かず、アタシは場地達の横を抜けてマイキーの前に飛び出す。
「和月……」
黒い瞳と目が合う……マイキーは、手を伸ばしてアタシの腫れた頬に触れた。
一瞬だけ、クシャッと顔を歪めて、すぐにまた怒りを込めて場地を睨む。
マイキーの足が、再び場地に向かって歩き出した。
「待って!」
パシッと、アタシはマイキーの手を掴んで引き止める。
解こうと振られても、アタシは強く掴んで離さなかった。
「場地!何でユウを殴った⁉︎」
手を振り解くのは諦めて、マイキーはこの位置から場地に問う。
場地は……
「……ムカついたからだ」
悪びれる様子もなく、マイキーに答えた。
「それ以外の理由なんてねーよ」
場地の挑発するような笑みが、マイキーの怒りを逆撫でする。
ホント何考えてンのアイツ……⁉︎
場地の言動が信じられなくて、アタシは頭を抱えたくなった。
「言い訳しねぇんだな。じゃあ、もういい……」
マイキーの冷たい声に、アタシの頭を最悪な結果が過ぎる。
「場地圭介、テメーを除──」
「マイキーッ!!!」
アタシは叫ぶように、強くマイキーを呼んだ。
後ろから肩を掴んで、無理矢理こっちを向かせる。
「………」
マイキーの目を見つめながら、アタシは首を横に振った。
マイキーにだけ伝わるように、小さく「やめて」と呟いた。
“それ”だけは絶対に、絶っっ対に言わないで!!!
「………」
訴えるアタシの目を見つめて、マイキーはぐっと喉を詰まらせる。
細められた瞳が、少しだけ潤んで見えた。
マイキーは場地に目を向けて、再度口を開く。
「……場地圭介、テメーはしばらく集会出禁だ」
その言葉に、アタシはホッと安堵の息を吐いた。
「ユウを殴った事……アタマ冷やして反省するまで、戻って来んな」
「……わかった」
場地は一言そう答えて、アタシ達に背を向け武蔵神社を後にした。
アタシは、場地の背中を見つめて、胸に手を当てる。
最悪の結果だけは、なんとか避けたけど……
嫌な予感は、まだ治まってはいなかった。