第6章 東京卍リベンジャーズ・龍宮寺堅
「……じゃ…ご馳走さん」
「ご馳走さま〜」
『ありがとうございました…………ぁ……龍宮寺先輩!』
歩き出した背中に声を掛けられ
俺は振り返った
「?」
『今度…デートしてください♪』
昔と変わらない笑顔に
思わず笑ってしまった
「…ハハ……今度な…」
次の交差点で三ツ谷と八戒と別れ
俺はひとりで歩き出した
初夏の少し手前の
気持ちの良い夜風が頬を撫でていく
彼女と一緒に帰った日の夜
ずっと手を付けられないままだった
タイムカプセルに埋める手紙を書いた
未来の自分にあんな前向きな言葉を送ることができたのは
俺の周りで起こった色んなことなど何も知らない彼女の笑顔に
救われたからだったのかもしれない
そこまで考えて
俺はふと足を止めた
(……何も知らない?……そんな訳ねーよな…)
・
・
・
卒業式の日
泣き腫らしたような目をした彼女から、制服のボタンが欲しいと言われた
けれど
第二ボタンを外そうとした俺を
小さな声が制した
『先輩?』
「…?」
『…そのボタンは……誰にもあげちゃダメです…』
「…あ?……でもオマエが欲しいって…」
『……私には…3番目のボタンをください…』
言われるまま
第三ボタンを外して渡すと
彼女は『宝物にします』と言って、嬉しそうに笑った
・
・
・
もしかしたら彼女は
あの時の俺の状況も
俺の気持ちも
全て分かっていたのかも知れない
分かった上で
変わらない態度で接してくれていたんだ
「……フッ……何だよ…" 織月レイナ "のくせに…」
独り言を呟いて、俺はまた歩き出した
(……そういえば…メニューにイヌピーの好きそうなツマミあったな………近いうち…連れて来てやろ…)
気持ち良く酔った頭でそんな事を考えながら
丸い月を見上げる
"大人になるために必要なモノを 探す旅をしろ"
柔らかな南風に
そっと背中を押されたような気がした…
龍宮寺堅 夢小説『2コ下の後輩』end.