第6章 東京卍リベンジャーズ・龍宮寺堅
『…こちら…"アノ"三ツ谷さんと柴さんですか?』
「…ぇ……何でオレらの事知ってんの…」
フリーズしている八戒を横目で見ながら三ツ谷が聞くと
彼女は当然のように答えた
『そりゃあもう…伝説の方々ですから!』
その言葉で
当時、彼女はギャルというよりヤンキー寄りだった事を思い出した
俺が言うのもなんだが
知らない人から見たら少し近寄りがたい雰囲気を持っていて
今の見た目にも
どことなくその名残りが感じられた
そんな彼女は
中1の頃
同中の3年だった俺にどういうわけか好意を持ってくれていて
しかも
それを周りに隠そうともしなかった
・
・
・
『龍宮寺先輩!』
初めて会ったのは
入学式があった日の放課後だった
『…1年に入った織月レイナです!よろしくお願いします!』
昇降口で呼び止められ
そんな風に挨拶をされた
派手な金髪
大きめの輪っかのピアスをつけたその女は
まだ幼さの残る顔に化粧までしていた
女のくせに挨拶なんて珍しいなと思いながらも
「おぅ」と一応返事をする
そのまま帰ろうとした俺に
彼女は言った
『……あの……握手してもらえますか?』
思いがけない言葉を突然言われ
理解が追いつかないまま右手を出すと
彼女は
小さな手で俺の手を握った
『…あ、ありがとうございました‼︎』
彼女は顔を真っ赤にして礼を言うと
頭を下げ
逃げるように廊下を走り去る
「……何だ…今の…」
呆然とする俺の耳に
遠くの方で『キャー♡』と叫ぶ声が聞こえた
・
・
・
「…今日は?ひとりで飲みに来たの?」
三ツ谷が聞くと
彼女は首を横に振った
『…いえ…この店実家なんです。……去年父が亡くなってから…兄と母の2人でやってて……私は昼間は違う仕事してるので…遅い時間だけ母と交代して手伝ってるんです』
「…そうなんだ…」
『……はい……あ…突然お邪魔してすみませんでした!…ゆっくりしていってください♪』
彼女はそう言って笑顔でお辞儀をすると
カウンターの向こうへ入り
エプロンを着けて長い髪をクルクルとまとめた
「…ドラケンの後輩かぁ……明るい子だな…」
「……あぁ…」
洗い物をしている彼女の横顔に昔の面影が重なって
俺は懐かしい気持ちで微笑んだ