第2章 東京卍リベンジャーズ・柴八戒
翌朝
目を覚ました時には
レイナはもう身支度を整えていた
『…おはよ……八戒…』
「…どこ…行くの?」
『……パリ………さっき電話したら、偶然チケット取れたんだ。…ラッキーでしょ♪』
彼女の声は
わざとらしい位に明るくて
それが
かえって心配な気持ちにさせた
「……レイナ?」
何を言ったらいいか分からなくて言葉を止めたオレを
レイナは真っ直ぐに見つめて言った
『……八戒………私…結婚する…』
「……ぇ…」
彼女が口にした相手の名前は
パリに住む世界的に有名なショーのプロデューサーだった
レイナはこれまでに
幾度となくプロポーズをされていたらしい
「…っ……でも、タカちゃんは?」
『……言ったでしょ?…隆とは…別れたの』
「…だからって…このまま何も言わずに行くつもり?」
『……ウン。………会ったら…絶対、心が折れちゃうから。…そしたら…また……これまでと同じ事の繰り返し。……隆を騙したまま付き合いを続けるのは、もう嫌なの…』
「……」
『……何も言わないで逃げるなんて、ズルいよね。でも、これ以上隆に嫌われたら…私、生きて行けない。……だから…その前に離れるの。………八戒なら……私の弱さ…分かってくれる?』
小さく頷いたオレに
レイナは美しい顔で微笑んだ
『……ありがとう…』
彼女は大きめのサングラスをかけると
横顔のままオレに言った
『……八戒………隆のこと、よろしくね…』
そして
モデル " 織月 レイナ " は
スッと背筋を伸ばした
『行ってきます』
彼女はひとつだけ大きく息を吐くと
グローブトロッターを転がしながら
ランウェイを歩くように颯爽と部屋を出て行った…
柴八戒 夢小説『美しいひと』 end.