第1章 東京卍リベンジャーズ・場地圭介
団地の薄い壁越しに
怒鳴り声が聞こえる
「テメェ!誰のおかげで飯が食えてると思ってンだ!」
この部屋の住人・場地圭介は
バイク雑誌をめくる手を止めた
1ヶ月程前
住んでいる団地の隣の部屋に誰かが越して来た
まだ顔は見た事が無かったが
住み始めて数日後から
度々男の怒鳴り声や人を殴っているような音が聞こえてきた
自宅で過ごす時間がそれほど長くはない圭介でも
これだけ耳にしているということは
ほとんど毎日この男は家族にそういう事をしているのだろう
自分とは関係の無い事でも
聞いてるだけでイラついてくる
「あー…うるせ」
持っている雑誌を壁に投げ付けようかと思った瞬間
携帯が鳴った
「場地さん、今日は行かないんスか?」
同じ団地の2階に住んでいる千冬から
ツーリングの誘いだった
「おー、じゃ行くか」
駐輪場で待ち合わせをして電話を切った圭介が
単車の鍵を手に玄関のドアを開けた
瞬間
隣の家のドアが勢いよく開き
制服を着た女が飛び出して来た
その女は
圭介と目を合わせる事なく階段を降りていく
それだけの事だった
「……」
特に気にも留めず
圭介はそのまま出掛けて行った