第9章 東京卍リベンジャーズ・灰谷兄弟
日本最大の犯罪組織・梵天
灰谷 蘭は、組織の中でも幹部という立ち位置にいた
彼が初めて人を殺したのは13の時だった
それから十数年の間に
一体、何人手にかけただろう
他にも
世間一般でいうところの罪など、数え切れないほど犯してきた
今の組織での仕事は
金が絡む犯罪行為全般
裏切り者や使えない人間を見せしめの為に殺すこともあったが、そんな簡単な仕事は稀で
武闘派の多い幹部連中のなか、洞察力と計算高さにも長けている彼に回ってくるのは、駆け引きや頭を使う内容のものが多かった
ある日
大口の交渉相手だった男が他の組織に襲撃された
一命は取り止めたと聞いた蘭は
口止めと脅しの意味を込めて、早速その男が運び込まれた病院へ見舞いに行った
特別室のドアを開けると
男の妻らしき女がベッドサイドの椅子から立ち上がる
ワザと丁寧に挨拶をし
見舞いの言葉を述べた
男が仕事の話があるので席を外すように言うと
女は売店に行くと言って部屋から出て行った
2人きりになった病室で
蘭はベッドに近付き、男を見下ろす
「…アンタの嫁にしちゃなかなかいい女だ…」
真っ青な顔を引きつらせながら
男は声を震わせた
「…た、頼むから妻には…」
「…もちろん何もしない……アンタがウチとの関係をこれまで通り続けるならな…」
「…こんな目に合わされたって、ちゃんとそのつもりでいる…もう病院には来ないでくれ…」
「……バカなことは考えるなよ…さもないと…」
ジャケットの胸元に手を入れ、拳銃をチラリと見せる
「ひぃぃ‼︎…わ、分かった‼︎絶対にアンタ達を裏切ったりはしない‼︎信じてくれ‼︎」
「…分かればいい…それじゃ、くれぐれもお大事にな…」
笑顔でそう言って部屋を出た
廊下ですれ違った看護師と何食わぬ顔で挨拶を交わす
特別室の患者とは表の仕事の関係者だと思われたようで
看護師も笑顔で蘭に挨拶を返した
そのままエレベーターに乗り、一階へ降りる
目立つのを避ける為
運転手役の部下は車に待たせてあった
総合受付の前を横切り駐車場へと向かう途中
頭に包帯を巻いた車椅子の女とすれ違い
蘭はふと、足を止めた