【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第52章 最終章 Begin Again
僕が目を見開いたそこには、僕が2年間ずっと一瞬も忘れなかった雨宮リラがいたのだ。
金髪にしていたはずのリラの髪は
あの日、初めて出会った日と同じ
ピンクブラウンのロングへ。
まるであの日にタイムスリップしたみたいに、あの頃のままのリラがそこに立っていた。
「良かった。ポアロ、まだ辞めてなかったんだね」
「…どうして…」
なぜリラがここにいる?とほとんど放心状態の僕。
そんな僕に、リラは微笑みながら一歩ずつ近付くと、真剣な眼差しで真っ直ぐに瞳を覗きながら言った。
「零に会いに来たの」
僕に…会いに?
そんなはずない。
期待してはいけない。そう思っているのに、僕の身体は一歩、また一歩とリラに近づいて行く。
「わたし、グラミー賞とったよ。
世界で1番のシンガーになった。
世界中の人に、わたしの歌を聴いてもらえた。
その夢はもう叶えたから、もう一つの夢を叶えたくて会いに来た」
「もう一つの夢…?」
「零とずっと一緒にいたい」
夢だと思った。
夢にまで見た光景が今確かにここにある。
言葉にならない僕は、リラの手を引いて咄嗟に自分の腕の中に閉じ込めた。
「零…?」
「……」
「っ…ねぇ、苦しい…」
そう言うリラの言葉を丸切り無視して、僕はもっと抱きしめる力を強めた。
夢じゃない。
リラの匂いだ。
リラの華奢な身体だ。
リラの体温だ。
「夢じゃないよな…」
「うん。夢じゃないよ」
僕のその一言で、僕の気持ちは全部リラに伝わったんだろう。
リラも嬉しそうに、僕の身体に身を寄せ、背中に腕を回して言った。