【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第50章 Last Kiss
生放送がCMへと変わった瞬間、
ステージ上で泣き崩れていたわたしを抱き上げて運んだのは藤さんだった。
周りのアーティストはわたしを見て、何があったんだろう?とヒソヒソ噂してる。
そして遠くの方で山岸さんが何度も何度も頭を下げているのが見えた。
プロ失格。
わたしは、何度周りに迷惑をかければ気が済むんだろう。
楽屋のソファーにわたしを横にさせると、藤さんはため息を吐きながら言った。
「何があった…?
只事じゃないだろ…」
「…なにも…」
零に振られました
なんて、言いたくなかった。
未だに信じていない。受け入れていないんだから。
「何もって…そんなはずないだろ?!」
「…藤さんに言われたくない」
わたしと零が別れるのを望んでいたくせに。
わたしに、アメリカに行けよと思っているくせに。
助けてくれたのにそんなことを思いながら、何も悪く無い藤さんを睨むわたし。
そんな時、楽屋に山岸さんが入ってきた。
「Lila!!」
「山岸さん…」
「…今日は、このまま家に帰すよ…
各所には僕が謝っておくから。
タクシーで帰れるか?」
「…帰る」
家に帰れば、きっと零が待ってる。
わたしの希望は、もはやそれしかなかった。
「こんな状態で一人でタクシーで帰るのか?
…もう俺の出番も終わったし、俺が送って行くよ」
「…タクシーで帰れます」
「藤くん…!助かるよ。
Lila、藤くんに送ってもらって?」
山岸さんは、よほどわたしが心配らしい。
そりゃそうか…さっき、全国生放送のカメラ前でわんわん泣き崩れたのだから。
わたしは大人しく、藤さんの車に乗り込んだ。
テレビ局の前には、あの生放送のステージを見て大勢の芸能記者が詰めかけていた。
その間を、運転席に藤亜蘭、助手席にわたしを乗せたマセラティが走り抜けて行く様を、無数のシャッターが捉えてる。
だけどわたしには、そんなスキャンダルどうでも良かった。
ただ、家に帰ったら零がまたあの笑顔で迎えてくれますように。
あれは冗談だったんだと、髪を撫でてキスしてくれますように。
そればかりだった。
相変わらず零のことしか、頭になかったの。
*
*