• テキストサイズ

【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】

第50章 Last Kiss




そんな思いを抱えながら、ローテーブルに料理を並べると、風見は大袈裟に喜んで見せた。


「さすが降谷さんですね!!
どれもこれも美味しそうです!」

「大袈裟だな。さ、召し上がれ」

「いただきます!!」


そう言って風見は大喜びに僕の料理を口に運んだ。

リラは、今日はちゃんとご飯を食べただろうか。
もともと驚くほど細いから、それだけが心配だった。


「あ!そういえば、今日のMステに沖野ヨーコさんが出るんですよ!」


僕の作った料理を幸せそうに頬張りながら、さらに幸せそうな顔をしてテレビのチャンネルをオンにした風見。

生放送の音楽番組が映し出され、ステージの真ん中にいたのは


「リラ…」


リラは、じっと前を見ながらステージに立っていた。

やっぱり、リラは強いな。
僕が心配していたのは、余計なお世話だったのかもしれない。

少しだけホッとしながら、テレビの向こうのリラの姿を目に焼き付けた。

好きだ。
たまらなく、好きだ。

そう、叫びたくなるぐらい、僕の胸はリラでいっぱいになる。

バンドの伴奏が始まり、静かにリラの歌声が響き始めた。


綺麗な透き通った声。
決して外さないピッチに表現力。

この歌声は、やがて海を渡り世界中の人の心を癒す。
そんな未来を、僕も見てみたい。

そう思っていると、サビに入る前からリラの声が揺れ始めた。

たどたどしく、一音ずつ繋ぐように歌っていたかと思えば、サビに入る瞬間にリラはボロボロと涙をこぼして泣き崩れた。


「っ…ぅ…ぇええ…」


「リラ…」


大好きで、大切なリラが泣いている。
けれど僕は、飛んでいって抱きしめてやることも涙を拭いてやることも出来ない。


/ 945ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp